2017年11月15日

購書日記(10)

火曜日は定休日。ゆっくり起きて、店で少し作業。源泉徴収分の納税などで税務署へ。お金を払い、領収書を受け取るだけで1時間ほどもかかってしまう。そういうものなのか。池袋でひとと会い、それだけで帰るのがもったいなくて古書往来座へ。『誓子自選句集』(新潮文庫)、中村真一郎編『立原道造詩集』(角川文庫)、阿部良雄『若いヨーロッパ』(中公文庫)と、絶版文庫をあれこれ買う。いずれも書き込みアリだがお買い得だった。吉祥寺のBOOKSルーエでは伊藤詩織『Black Box』を買い、三鷹の啓文堂ではe-honで注文していたバーバラ・ジョンソン『批評的差異』を受け取る。その頃にはもう日も暮れていて、妻は用事で出かけているのだと気づいてカフェとバーミヤンを梯子して読書。ヘンリー・ジェイムズ『ねじの回転』とトルーマン・カポーティ『誕生日の子どもたち』を読んだ。「クリスマスの思い出」は同じカポーティの『ティファニーで朝食を』でも読んでいた。寂しくて暖かくて、とても好きな短編。バーバラ・ジョンソンを読みはじめ。

2017年11月14日

水中書店から出かける三鷹まち歩きマップ

「水中書店から出かける三鷹まち歩きマップ」というフリーペーパーをつくりました。A4二つ折り、4頁というちいさな冊子です。普段から足を運ぶ近所のお店を紹介した、めちゃくちゃミニマルなローカル情報メディア。三鷹北口では水中書店、テオレマカフェ、南口ではよもぎBOOKS、リトルスターレストランでお配りしています。


イラストとデザインはイラストレーターのコルシカさん(corsicadayo.tumblr.com)が担当してくれました。この冊子をつくりたいという最初のアイデアが生まれたときから、コルシカさんのイラストが頭にありました。とても素敵に(本当に素敵なのです。常套句を軽い気持ちでつかっているのではないのです。)仕上げていただき、感謝の気持ちでいっぱいです。また、取材、掲載を許可して下さった各店のみなさま、テキストで協力して下さったFさん、どうもありがとうございました。
画像は冊子の現物と、コルシカさんが記念につくってくれたキャラ化した私です。

2017年11月7日

購書日記(9)

定休日。遅く起きて、ゆっくりと仕度をして店へ。事務仕事、振り込みなどを済ませる。ツヴェタン・トドロフの『文学が脅かされている』から表題の評論を読み終え。「文学の自律性」という形式主義や構造主義の価値観に対する疑いに貫かれた文章。引用されていたジョルジュ・サンドがフローベールに宛てた手紙の「ニュアンスこそ芸術の目的なのです」という一節に惹きつけられる。「ニュアンス」という言葉が語源的に「天候」という言葉に近いのだと、あるひとが教えてくれたのを思い出した。妻と待ち合わせていた国立に早く着き、みちくさ書店で文庫を二冊買う。三好達治訳のフランシス・ジャム『夜の歌』(新潮文庫)が殊更うれしい。100円だった。妻と合流してオープンしたばかりのMuseum Shop Tでヘミングウェイを、増田書店でフーコーを、帰りがけにpaper wallでツェランを、と勢いがついたように買ってしまう。まぁ、たまにはよいのでは。

2017年11月1日

いろいろ

11月がはじまったところで久々の更新です(本当は昨夜更新したのですがあまりにもテンションが低くて自分で読み返しても萎えるような代物であったため削除しました)。まずはお知らせで、今月から営業時間が変わります。11月は11:00~22:00の営業、12月からは11:00~21:00の営業となります。ご不便をおかけする方もいらっしゃると思いますが、ご理解のほどお願い申し上げます。


10月、雨が多くて古本屋的にしんどかったというのもあったが、試しに10時開店にしたのが堪えた。10時開店だと8時台には起きなければならないのだけれど、もうどうにもこうにも。本当に早起きが苦手なのだと。それまでは開店前に読書時間をつくっていたのでこれも儘ならず、本当に本の読めない一か月でした。けっこう前の投稿でツヴェタン・トドロフを読んでいるという話をしましたが、まだ読んでいます。……。今月はもっと本を読む時間がつくりたい。


26日は兄の誕生日でした。兄の好みや欲しいものがまったく分からず、姪に宛てて絵本を送ることで、兄には子どもに本を読む機会を提供する、という風にここ数年はしている。それでも文句を言って寄こさないのだから、理解があると言えなくもない。今年はエリック・カールや11ぴきのねこの本を送りました。気に入ってくれるといいな(姪が)。


いつも均一の本を買ってくれるお客さんが地域の歴史に詳しくて、たまにお話を伺うのがたのしい。この間は武蔵野東学園の創設者、北原キヨの話をしてくれた。自分には未知の人だったが自閉症の児童教育の分野ではとても著名なひとらしい。自閉児を健常児から隔離するのではない混成学級を基礎として武蔵野東幼稚園を開園。これが現在の武蔵野東学園の前身ということらしい。関連書もかなり出ていて、機会に恵まれれば力を入れていきたい分野でもある。まずは何か一冊でも手元に置いて読んでみようと思う。


某日。久しぶりに「日本の小説家では誰が一番好きなの?」と訊かれて考え込む。「堀辰雄か福永武彦ですかね……」と答えたものの、どうにも自分で釈然としない。後でほかにも答えようがあったのではないかと思い悩む。庄野潤三、小沼丹、山川方夫、遠藤周作、山田稔、尾崎翠……。なかなか決められない。いや、もちろん堀辰雄も福永武彦も大好きなのだけれど。数年前に神保町の老舗の番頭の方にみんなで同じような質問をしたとき「志賀直哉」と即答されたのを思い出す。あの歯切れのよさ。


東京でも木枯らし一号が吹いたとかで、めっきり寒くなった。年末が近づいてくる。うろ覚えだが、今年のはじめには新しいことに挑戦する一年をどうにか乗り越えられれば、ということを一年の目標にしたはず。従業員を雇いながらのやり繰りにも少しずつ慣れてきた。今年も残すは二か月ばかり。滑り込むように、少し攻めの姿勢に転じつつ年を越したい。

2017年10月5日

水中書店も加盟している東京都古書籍商業協同組合が主催する「古書の日スタンプラリー」が昨日からはじまりました。都内の73店に特製のスタンプが設置され、これを台紙に集めていくと、スタンプの数によりけりの景品がもらえる、という催しです。いつもたくさんの古本屋をまわっていらっしゃる方、行ったことがない古本屋に行くためのきっかけが欲しかった方、スタンプラリーが大好きな方、ぜひご参加ください。期間は来月5日まで。台紙はスタンプラリーに参加しているお店の店頭で配布しています。野崎歓さん、ホンマタカシさん、石神井書林の内堀弘さんのエッセイも掲載。メ~探偵コショタンの顔が目印。


スタンプはそれぞれ一つの文芸作品をモチーフにしていて、弊店に割り当てられたのは上司小剣の「鱧の皮」のスタンプ。恥ずかしながら小剣のことはまったく知らなくて、なんだか地味そうな作品の表題にもがっかり。どうせなら梶井基次郎「檸檬」(八王子・むしくい堂)や横光利一「機械」(学芸大学・流浪堂)や中勘助「銀の匙」(日暮里・信天翁)がよかった、などとぶつくさ。それでも「まずは読んでみよう」と新刊でポプラ社から出ている百年文庫『膳』の巻を購入(この巻に藤沢桓夫「茶人」などとともに収録されている)した。今日市場の行き帰りに読んだのだけれど、これがとても面白くて、スタンプもすっかり気に入ってしまった。


「鱧の皮」は、道頓堀で鰻屋を営む女将のお文のある一日を描いた作品で、彼女のもとに家出した道楽者の夫からの手紙が届くところからはじまる。この夫にすっかり愛想を尽かしている母親や叔父との軽妙な会話では夫のことなど鼻にもかけていないように装いながらも、母親や叔父には気づかれない胸のうちに、お文はまだ夫のことを懐かしがるような気持ちを持っている、そういう様が描かれている。ざわめくお文の感情をなだめるように合間合間に挿入される町の描写がうつくしい。お文が叔父といっしょに千日前の雑踏を歩く後半などを読んでいると、夫婦の人情話は口実で、作者はこの作品で町というものについての考えを深めたかったのだろうか、と思ってしまうほどその町の描写が素晴らしい。


百年文庫の巻末の解説によると、上司小剣は明治7年、奈良県の代々神主の家に生まれた。大阪で学生生活を送り、代用教員を経て上京。読売新聞社に務めながら執筆に向かった。当時の読売新聞社の社会部には徳田秋声、島村抱月がいて、後輩として正宗白鳥がいるなど文芸の薫りが豊かな職場であったらしい。1906年に創刊した雑誌『簡易生活』に主に小説を発表して、1914年に『ホトトギス』に「鱧の皮」が掲載されるとこれが評判になり、作家としての地位を築くに至ったらしい。「田山花袋、近松秋江、加能作次郎らの賞讃」を受けた、とある。京阪を舞台にさまざまな作品を書いたが、読売新聞社を退社後は変わりゆく都市とひとへの関心から四部作になる長編『東京』を書き、晩年は歴史伝記小説に向かった。昭和22年没。


もっと別のことを書こうとしていたのに、すっかりスタンプラリーと上司小剣のことばかりになってしまった。少し別の話も。木曜日に店員Oさんと顔を合わせると、休みのあいだにどんな本を買ったり読んだりしていたかという報告合戦になる。今日は火曜日に新宿のBOOK UNIONで買った臼田捷治編著『書影の森――筑摩書房の装丁1940-2014』(みずのわ出版)を見せびらかす。しっかり羨ましがってくれて、満足。持つべきは同僚である。Oさんは服部昇大『日ポン語ラップの美ー子ちゃん』(このマンガがすごい!comics)を読んでいると見せてくれた。たしかに画が可愛くて、その上めちゃくちゃ面白そう。早速e-honで注文する。ついでに「鱧の皮」の話もすると、これにも興味を持ってくれてうれしい。


とりあえず今日はここまで。今月から午前10時に開店するというのを試していて、早く起きることで気持ちにも影響があるということなのか、最近ほんとうに仕事がたのしいです。秋は読書の季節ということもあります。気が向いたとき、足が向いたとき、ぜひ水中書店にお立ち寄りください。面白そうな本、すてきそうな本、たくさん揃えてお待ちしています。それでは、また。

2017年10月3日

購書日記(8)

定休日。昨晩からの雨はあがって曇空。割と早く起きて神保町へ。古書会館で用事を済ませて東京堂書店に行くと、入ってすぐのところで北村太郎のささやかなフェアをしていた。詩集『港の人』新装新版の刊行にあわせて、ということらしい。ここでは『北村太郎を探して』(北冬舎)を購入。2004年に出ていた本で、まだ読んだことがなかった。装丁が微妙だが仕方ない。澤口書店では映画評論家で詩人の飯島正が亡き妻のために編んだ遺稿歌集、飯島志寿子『雪雪と』を見つけて買う。私家版だが製作は新潮社とある。可憐な装丁は田中美子。映画を観ようと新宿に行くと、ちょうどその映画を見てきたところだというS書店のNさんにばったり出くわす。世間話などして、映画までの時間つぶしのつもりでBOOK UNIONへ。ここで前々から欲しいと思っていた臼田捷治編著『書影の森――筑摩書房の装幀1940-2014』(みずのわ出版)を見つけて、値段に少し怯みつつ思いきって買う。ひさびさに古本にときめきまくった一日。最近の読書のことも。ヘミングウェイの『日はまた昇る』(新潮文庫)と長谷正人の『ヴァナキュラー・モダニズムとしての映像文化』(東京大学出版会)をそれぞれ時間をかけて読んだ。後者、長谷正人ならではの書きつつ考え、考えつつ書く、実感と偶然の発見や気づきに満ちた文章に身もだえる。抜群に面白い。トドロフの『文学が脅かされている』(法政大学出版局)を読みはじめたところ。これも面白い。

2017年9月24日

営業時間の(試験的な)変更のお知らせ

営業時間の(試験的な)変更のお知らせです。10月1日から31日までの一か月間、試験的に営業時間を10:00から22:00までに変更いたします。開店時間を2時間早め、ひとの動きを見てみよう、という試みです。ご近所で午前中のほうが動きやすいという方、中央線の古本屋めぐりで午前中のうちに一店まわっておきたいという方、ぜひご利用ください。もちろん買取にも対応できます。まずは一か月、よろしくお願いいたします。

2017年9月18日

どうもありがとうございました

Independent Bookstore's BOOK FES 2017、無事終了しました。足を運んで下さったみなさま、どうもありがとうございました。一日目はずっと雨が降っていたにも関わらず客足が途切れることがなく、驚きました。二日目はそれまでの心配とは裏腹に炎天と言ってよいほどの好天。主宰のCat's Cradleが閉店するため今回が最後のイベントとなりましたが、全四回のイベントのうちでも最も盛り上がったのでは。

Cat's Cradleのみなさま、いっしょに出店して下さった本屋のみなさま、水中書店スタッフ、本当にありがとうございました。個人的にも一区切りついたようなすっきりした気持ちです。水中書店は今後はイベントでの出店は控え、これまで以上に店に注力しようと考えています。今後ともよろしくお願いします。