2017年9月2日

新しい本 その3

ひさびさに入荷している新刊書籍の紹介です。こういう情報の発信にはSNSがないと不便だとつくづく感じ入りながら。それにしても好い本、好さそうな本が揃っています。大きな新刊書店でも手に入らないもの、入りにくいものもあります。ぜひチェックしてみてください。


短歌と俳句、二冊のアンソロジー

『桜前線開架宣言』(左右社)
2,376円(定価)

『天の川銀河発電所』(左右社)
2,376円(定価)

1970年以降生まれの歌人のアンソロジー『桜前線開架宣言』が左右社から出たのは2015年の年末。この刊行をひとつの象徴として、2016年はまるで自分が短歌の面白さに包囲されていってしまうような、力づよい流れを感じさせられた一年になりました。水中書店でも本書は常時在庫あり。根づよい人気の一冊です。以下、収録作品からの引用です。

  偶然に知りたるきみの体温をおもへば夏の樹皮に似てゐき(横山未来子)

  一枚の水つらぬきて跳ね上がるイルカをけふの憧れとせり(同)

  いちにちの読点としてめぐすりをさすとき吾をうつ蝉時雨(光森裕樹)

  あかねさすGoogle Earthに一切の夜なき世界を巡りて飽かず(同)

  しばらくは眼というぬるき水面に葉陰映して君を待ちおり(大森静佳)

  ひらがなは漢字よりやや死に近い気がして雲の底のむらさき(同)

  はちぐわつのきみの触れたりきみはもう存在するとは別の仕方で(吉田隼人)

  びいだまに世界宿してラムネとはつね透きとほるたましひの比喩(同)

そしてこの夏、待望の俳句のアンソロジー『天の川銀河発電所』が同じ左右社から刊行されました。1968年以降生まれの54人の俳人をそれぞれ「おもしろい」「かっこいい」「かわいい」のセクションに分け、対談形式の「読み解き実況」を付す、チャレンジングな入門書にして必携書。以下、収録作品からの引用です。

  学名のひびき他界の秋を帯び(小津夜景)

  水ぬるむ日のあをいろを鳥に巻く(同)

  春泥を来て汝が部屋に倦みにけり(榮猿丸)

  裸なり朝の鏡に入れる君(同)

  サルビアや砂にしたたる午後の影(津川絵理子)

  真清水を飲むやゆつくり言葉になる(同)

  柚子の花君に目があり見開かれ(佐藤文香)

  歩く鳥世界にはよろこびがある(同)


探していた詩集

朝吹亮二『密室論』(七月堂)
2,160円(定価)

白鳥央堂『晴れる空よりもうつくしいもの』(思潮社)
2,376円(定価)

古書として人気の高い朝吹亮二の詩集のなかでも、殊更に探すこと、手に入れることが難しかった『密室論』が待望の新装復刊。ようやく一冊の詩集として手に取ることができるようになりました。金澤一志による装丁の軽やかさは元版にはなかったもの。『まばゆいばかりの』で詩人を知ったというひとにもぜひ読んでいただきたい名詩集です。
2012年に刊行された白鳥央堂の第一詩集『晴れる空よりもうつくしいもの』も入荷しています。わたしが白鳥央堂をはじめて知ったのは森本孝徳が主宰する詩誌『Lyttoral』でのことで、そのときには本書は既に版元品切となっていました。そのときは古本屋を何軒もまわってようやく手にしたのでした。今回は著者の手元にある分から分けていただくことができました。定価での販売です。


夏葉社と編集工房ノアの本

埴原一亟『古本小説集』(夏葉社)
2,376円(定価)

涸沢純平『遅れ時計の詩人――編集工房ノア著者追悼記』(編集工房ノア)
2,160円(予価)

夏葉社の新刊、埴原一亟『古本小説集』を入荷しています。戦前に三度芥川賞の候補になりつつ受賞を逃し、古本屋や保育園の経営の傍ら小説を書きつづけた作家の作品集。撰者は善行堂店主の山本善行。櫻井久による装丁もすてきな一冊です。
編集工房ノアの社主、涸沢純平のはじめての著書『遅れ時計の詩人――編集工房ノア著者追悼記』はまだ入荷していませんが、注文済み。今月8日ぐらいに本が出来上がるそうなので、入荷はその後になるかと思います。この本を目あてに遠方からいらっしゃる場合は予めお電話で入荷を確認していただいてからのほうがよいかも知れません。

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